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Release 劇場公演

劇団「地点」のパンデミックに切り込むノーベル賞作家最新戯曲『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』舞台詳細発表!

2023年1月17日

京都を拠点に国内外で活動を展開する劇団「地点」(運営会社:合同会社地点)が、『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』の舞台コンセプトを公開した。この作品は、オーストリアのノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクによる新型コロナウイルス感染症の世界的大流行をテーマとする新作戯曲で、日本初上演となる。

 

イェリネクの戯曲は、物語性が希薄で、観客の頭の中で言葉そのもののイメージが増殖し乱反射することを狙っているため、難解と敬遠されがちだが、地点の演出家・三浦 基は2012年初演『光のない。』以降、作曲家の三輪 眞弘、建築家の木津 潤平とタッグを組んで、この作家の難解な世界観の体現に取り組んできた。抽象的かつ迫力のある舞台造形は『スポーツ劇』(2016年)、マルチリンガル上演『ノー・ライト』(2022年)でも強い印象を残してきたが、『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』はその最新作となる。

 

現在、創作は佳境を迎えており、木津 潤平が手がける空間デザインは、舞台上に反射鏡ともシャーレとも思しき鏡ばりの皿舞台を配置。バランスボールの上に置かれた皿舞台は6名の俳優の動きにより全方向に傾斜する。俳優は「ウイルス」「マスク」「ワクチン」と名付けられた三つの状態(身振りとお囃子)を演算によって常に変化させながら、客席に語りかけていく。数多の噂と陰謀論、それらによって引き起こされる分断を描きながら、人類が普遍的に抱えてきた「病」に切り込む。複数の声が重なり合うことが常態化した舞台は、これまで以上に摩訶不思議かつ目の離せないものとなっている。

音楽監督の三輪 眞弘は、自ら提唱した「4ビットガムラン」の形式を用いた新曲を準備。2007年に発表した『愛の賛歌』以降、ガムランを用いた音楽をつくることは氏のライフワークのひとつとなっている。演奏はジャワガムランアンサンブル・マルガサリ(出演:大井 卓也、谷口 かんな)が担当。映像を用い、この世のものともあの世のものとも判然としない演奏形態を目指しているそうだ。俳優が踏む三種類のステップが刻むリズムや彼らが発声する言葉との呼応、また「見えること」と「聞こえること」の相互関係により、目まぐるしく変容する4ビットの音世界を劇場で体感することができる。
 
公演は2月16日~23日、横浜のKAAT神奈川芸術劇場にて行われる。尚、本作は12月に上演された『ノー・ライト』とともに、〈地点によるイェリネク戯曲連続上演〉というプロジェクトの一環で上演され、前作『ノー・ライト』の批評やクリエイションの様子などは公演特集サイトで閲覧可能である。
 
【地点『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』公演特集サイト】
 
 
<エルフリーデ・イェリネク Elfriede Jelinek>
詩人、小説家、劇作家。1946年オーストリア生まれ。ビューヒナー賞をはじめ数々の賞を受賞。小説『ピアニスト』(1983)は2001年にミヒャエル・ハネケによって映画化され、同年カンヌ映画祭でグランプリを受賞した。2004年、「豊かな音楽性を持つ多声的な表現で描いた小説や戯曲により社会の陳腐さや抑圧が生む不条理を暴いた」功績により、ノーベル文学賞を受賞。
 
<三浦 基 Motoi Miura>
地点代表、演出家。1973年生まれ。2007年チェーホフ作『桜の園』で文化庁芸術祭新人賞受賞。2017年イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞選考委員特別賞受賞。その他、京都市芸術新人賞など受賞多数。2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘でシェイクスピア作『コリオレイナス』を上演するなど海外でも高く評価されている。著書に、『おもしろければOKか? 現代演劇考』(五柳書院)、『やっぱり悲劇だった「わからない」演劇へのオマージュ』(岩波書店)。
 
<三輪 眞弘 Masahiro Miwa>
作曲家。1958年東京生まれ。1980年代後半からコンピューターを用いたアルゴリズミック・コンポジションと呼ばれる手法で数多くの作品を発表。音楽についての独自の方法論「逆シミュレーション音楽」で2007年アルスエレクトロニカ、デジタル・ミュージック部門グランプリ(ゴールデン・ニカ)、2010年芸術選奨文部科学大臣賞、2020年サントリー音楽賞などを受賞。旧「方法主義」同人。人工音声歌唱ユニット「フォルマント兄弟」の兄。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授。
 
<木津 潤平 Junpei Kiz>
1969年愛知県生まれ。建築家。東京大学で香山 壽夫氏に師事。米国建築家協会Japan Design Award大賞、英国Archtectual Review Awardsなど受賞。舞台の空間デザインにSPAC『マハーバーラタ』『アンティゴネ』(仏アヴィニョン演劇祭招待作品)、現代オペラ『浜辺のアインシュタイン』(神奈川県民ホール)など。地点のアトリエ「アンダースロー」、アンダースローの食堂「タッパウェイ」の設計も手がける。
 
【公演情報】
地点『騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!』
日時: 2023年2月16日(木)~23日(祝・木)
会場: KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
 
 
<劇団「地点」について> http://chiten.org/
京都を拠点とし、総合芸術としての演劇活動を国内外で広く展開する劇団。多様なテキストを独自の手法で再構成・コラージュして上演する。言葉の抑揚やリズムをずらす独特の発語は「地点語」とも言われ、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにするその手法はしばしば音楽的とも評される。代表は演出家・三浦 基(みうら もとい)。
2013年、本拠地京都にアトリエ「アンダースロー」をオープン。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品『コリオレイナス』を上演するなど、海外公演も行う。2017年、イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞選考委員特別賞受賞。
 
 
<≪ビヨンドチテン≫について> https://note.com/beyondchiten
空間造形、衣裳、グラフィック、照明、音楽、言葉、演技、演出、劇場、世界演劇史など、一つの舞台作品の創作と発表の過程で私たちが手にし、目にする技術や知識は膨大なものである。さまざまなクリエイターが関わり、それぞれの専門性を発揮してつくられる舞台作品を<演劇果実>と命名。その皮をむき、総合芸術としての演劇を深く味わっていただくための情報発信プラットフォーム。

 

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