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Release 劇場公演

20世紀最大の劇作家、ベルトルト・ブレヒトの名作を白井晃演出で上演!世田谷パブリックシアター

2024年7月22日

『セツアンの善人』

20世紀最大の劇作家、ベルトルト・ブレヒトの名作を白井晃演出で上演!

撮影:山崎伸康

 

2024年10月16日(水) ~ 11月4日(月・休)
会場:世田谷パブリックシアター

 

これまで数々のブレヒト作品を手掛けた白井晃が、満を持して代表作『セツアンの善人』の演出に挑む

『セツアンの善人』は、第二次世界大戦中、ナチスにより市民権を剥奪されたドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが亡命先で執筆し、1943年にスイスのチューリッヒで初演されました。神様が地上に降りてきて善人を探すという本作は、ブレヒト作品を代表する寓意劇として、今も多くの人々に愛され、世界各地で上演を重ねています。ブレヒトは、第一次世界大戦への徴兵経験から、反戦を訴える作品や、資本主義を風刺した作品など、社会性の強い戯曲を多く世に送り出しましたが、それと同時に叙事的演劇や異化効果といったメソッドも提唱し、その偉大な功績から20世紀最大の劇作家と称されています。『セツアンの善人』にはそうしたブレヒトならではの醍醐味が存分に味わえるエッセンスがふんだんにちりばめられ、「人はどこまで善人でいられるのか」「人はお金で幸せになれるのか」という現代社会に生きる我々にも通じる痛切で普遍的な問いかけは、ストレートに現代社会を照射します。

ブレヒトから大きな影響を受けているという演出の白井晃は、これまで『三文オペラ』(2007年演出、18年出演)、『マハゴニー市の興亡』(16年、演出・上演台本・訳詞)、『Mann ist Mann』(19年、企画監修)、『アルトゥロ・ウイの興隆』(20年、21~22年再演、演出)と、数々のブレヒト作品に取り組んできました。ブレヒト作品が持つ社会への批評性にフォーカスし、現代社会を照射する作品づくりを目指してきた白井が、魅力的な総勢17名のキャストを得て、この度、満を持して『セツアンの善人』の演出に挑みます。

また今回の上演に際しては、ドイツ文学者の酒寄進一が新訳を手がけ、ミュージカルやストレートプレイまで数々の音楽を作曲し、『ある馬の物語』(23年)でも白井とタッグを組んだ国広和毅が音楽監督を務め、パウル・デッサウの楽曲を基に、歌ありライブ演奏ありの臨場感のあふれる舞台を、強力なスタッフ陣と共に創出してまいります。

 

タイトルロール・葵わかなが、二役を演じ分ける! 善人とは? 幸福とは? 現代社会を照射する寓意劇

『セツアンの善人』は、畏怖すべき神様たちが、人間臭い立ち居振る舞いで下界に現れ「善人探し」をするという奇想天外な設定からスタートします。貧民窟に暮らす心優しき娼婦のシェン・テ(葵わかな)は、神々から「善人である」と認められ、褒美として与えられた大金を元手に商売をはじめますが、「善人であること」と「生きること」の両立は矛盾することだらけで、さまざまな困難が立ちはだかります。元来がお人好しのシェン・テの家には居候が増え続け、しまいには自分の財産まで分け与えてしまう始末。このままではいけない、我が身が滅びるだけだと気付いたシェン・テはある計画を思いつきます。それは、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄(いとこ)シュイ・タ(葵わかな・二役)を作り出し、自らがその従兄に変装をして、邪魔者を一掃するというものでした。

「人はどこまで善人でいられるのか」「人はお金で幸せになれるのか」という現代社会に生きる我々にも通じる痛切な問いかけが、葵わかなが一人二役で演じ分ける、心優しき女性シェン・テと、ビジネスに徹する冷酷な青年シュイ・タという真逆な人物を通して描き出されていきます。この葵わかな扮するシェン・テを中心に、アジアの都市とおぼしき「セツアン」に棲息する人々の息遣いを、演出の白井が今日的な視点からすくい取り、繊細にしてダイナミックな舞台を構築していきます。

 

歌あり、ライブ演奏あり 音楽劇としての『セツアンの善人』

ブレヒトの作品では劇中に出てくる音楽も大きな要素となりますが、本作にも、ブレヒト自身が委託した音楽家パウル・デッサウによる楽曲が並びます。さらにそれに加えて、国広和毅のオリジナルによる新たな楽曲も追加される予定で、葵わかな・木村達成をはじめミュージカルでも活躍するキャスト陣の歌唱も本作の魅力の一つです。バイオリン・チェロ・パーカッションという編成によるライブ演奏や、山田うんによる振付もあり、音楽劇としても存分に楽しめる臨場感にあふれた作品としてお届けします。見どころ、聞きどころ満載の舞台に、是非ご期待下さい。

 

葵わかな、木村達成など 若手からベテランまで
総勢17名の個性あふれるキャストが集結

撮影:山崎伸康

シェン・テと、シェン・テの分身である架空の従兄シュイ・タを演じるのは、テレビドラマや映画、CM、ナレーション、そしてミュージカルからストレートプレイまであらゆるジャンルで躍進目覚ましい葵わかなです。シリアスからコメディーまで確かな演技力で役の幅を広げてきた彼女が、相反する性質を持ったシェン・テとシュイ・タをどのように演じ分けるのか注目が集まります。

シェン・テが恋に落ちる失職中のパイロット、ヤン・スンには、ミュージカルからストレートプレイまで多くの舞台作品への出演で着実にキャリアを積み重ね、映像作品にも活躍の場を広げる木村達成が扮します。

また、神様と交信する水売りのワンには、映像から舞台まで幅広く活躍しダンスなどの身体表現も得意とする渡部豪太、息子を溺愛するヤン・スンの母親のヤン夫人には七瀬なつみ、シェン・テが買い取ったタバコ屋の元オーナーである未亡人のシンをあめくみちこ、シェン・テのタバコ屋に居座る大家族の祖父を小林勝也、そして下界で善人探しをする人間臭い3人の神様を、ラサール石井・小宮孝泰・松澤一之が演じます。

このほか、栗田桃子・粟野史浩・枝元萌・斉藤悠・小柳友・大場みなみ・小日向春平・佐々木春香という、若手からベテランまで、信頼できる実力派の総勢17名の個性豊かな出演者が集結し、百年近く前に書かれた本作を現代社会にも深く通ずる普遍的な作品として立ち上げていきます。

『セツアンの善人』は、今までの人生の価値観をちょっと見直すきっかけになる、そんな作品になるかもしれません。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

 

あらすじ

善人を探し出すという目的でアジアの都市とおぼしきセツアンの貧民窟に降り立った3人の神様たち(ラサール石井、小宮孝泰、松澤一之)は、水売りのワン(渡部豪太)に一夜の宿を貸してほしいと頼む。ワンは街中を走り回って神様を泊めてくれる家を探したが、その日暮らしの街の人々は、そんな余裕はないと断る。ようやく部屋を提供したのは、貧しい娼婦シェン・テ(葵わかな)だった。その心根に感動した神様たちは彼女を善人と認め、大金を与えて去っていった。それを元手にシェン・テは娼婦を辞めてタバコ屋を始めるが、店には知人たちが居座り始め、元来お人好しの彼女は彼らの世話までやくことになってしまう。ある日、シェン・テは、首を括ろうとしていたヤン・スン(木村達成)という失業中の元パイロットの青年を助け、彼に一目惚れをしてしまう。その日からシェン・テはヤンが復職できるように奔走し、金銭的援助もしはじめるのだが、その一方で、人助けを続けることに疲れ始めていた彼女は、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄、シュイ・タ(葵わかな・二役)を作り出し、自らその従兄に変装をして、邪魔者を一掃するという計画を思いつく……

 

▼上演台本・演出 白井晃 メッセージ

 

この世の中でホントに善人でいることができるのか?善意と言われても、無料の奉仕などあり得るのか、自己満足もしくは何か裏にあるのではないかと疑ってしまう。そんな殺伐とした世界に私たちは生きている。
真に人と人とが信じあえて、思いやれる時が来たらと願っても、そんなことなど絶対にあり得ない、信じる方が愚かだと思えてしまう。私たちは諦めの中に生きている。だからこそなお、今このブレヒト作品を上演する意味があると思ったわけなのです。パンデミックや災害、戦争の悲壮を身近に感じる中で、社会の原理が本質的に変わることを目指すべきとした、かつてのブレヒトのメッセージはより一層強力に心に響くのです。
演劇に社会を変える力など、もはやありはしないのかもしれない。
それでも、主人公シェン・テを今の世界を生きる人間として描くことで、少しの時間だけでも演劇の力を信じたいと思うのです。

 

▼出演・葵わかな コメント

シェン・テと、シェン・テが劇中で演じるシュイ・タの二役を演じます。なかなか複雑な構造の二役に挑戦することになります。シェン・テはとてもお人好しな性格で神様から善人だと認められ、逆にシュイ・タは周囲から冷酷な人物だと評価されています。果たして本当にそうなのか、見ている人によっても色々と感じ方が変わるような役でもあると思うので、そういう部分も楽しんでいただけるように頑張りたいです。
今回、演出の白井さんとは初めてご一緒させていただきます。白井さんは俳優の新境地を開拓してくださる印象があったので、私も新しい挑戦ができることをとても楽しみにしております。
『セツアンの善人』は80年以上前に書かれたお話ではありますが、素敵な共演者の皆様と演出の白井さんと共に、今を生きる私たちにも響くようなメッセージをしっかりと表現していきたいです。また音楽の力によって、より親近感や楽しい瞬間も生まれるような作品になればいいなと思っております。

 

▼出演・木村達成 コメント

失業中のパイロットの青年、ヤン・スンを演じます。ヤン・スンは一見すると嫌な奴のように思えるのですが、とても人間らしくもあって、そういったところに親近感を覚えています。
白井さんの演出作品にはこれまで二度出演させていただきましたが、いつも自分はどうあるべきなのかといったことや、人のために何かをする自己犠牲の気持ち、観客の皆様に与える影響などについて考えるきっかけを与えてくださり、自分が変わる瞬間に何度も立ち会っていただきました。今回、世田谷パブリックシアターで『セツアンの善人』に出演することになり、改めてそういったことをたくさん考えられる稽古が待っていると思うと、少し不安でもあり、同時に楽しみでもあります。
約1年ぶりの舞台出演となりますが、この作品を観ていただいた皆様に、“面白そうな奴だな”と思っていただけたら幸いです。

 

▼公演概要

『セツアンの善人』

2024年10月16日(水) ~ 11月4日(月・休)
会場:世田谷パブリックシアター

【作】ベルトルト・ブレヒト
【音楽】パウル・デッサウ
【翻訳】酒寄進一
【上演台本・演出】白井晃
【訳詞・音楽監督】国広和毅

【美術】松井るみ
【照明】齋藤茂男
【音響】井上正弘
【衣装】伊藤佐智子
【ヘアメイク】川端富生
【振付・ステージング】山田うん
【演出助手】豊田めぐみ
【舞台監督】田中直明

【宣伝美術】秋澤一彰
【宣伝写真】山崎伸康
【宣伝衣装】伊藤佐智子
【宣伝ヘアメイク】川端富生

【出演】
葵わかな、木村達成、渡部豪太、七瀬なつみ、あめくみちこ

栗田桃子、粟野史浩、枝元萌、斉藤悠、小柳友、大場みなみ、小日向春平、佐々木春香

小林勝也、松澤一之、小宮孝泰、ラサール石井

【演奏】
磯部舞子(Vn. 東京公演) 、島津由美(Vc.)、 熊谷太輔(Perc.) / 加藤優美(Vn. 兵庫公演)

 

<兵庫公演>
【日程】2024年11月9日(土)13:00、11月10日(日)13:00
【会場】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

 

【世田谷パブリックシアターHP】https://setagaya-pt.jp/
【『セツアンの善人』公演ページ】https://setagaya-pt.jp/stage/16042/

 

 

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