公演ルポ
「観て面白いと感じたお客様がもしこういう試みを今後も続けていくといいなと思ったら、ぜひ声をあげてください」 東京キャラバン the 2nd
2022年12月25日
個々のパフォーマンスを尊重しながら混ぜ合わせていく文化サーカス
「東京キャラバン the 2nd」が始動した。野田秀樹(劇作家・演出家・役者)が発案した“人と人が交わるところに文化が生まれる”というコンセプトからはじまった新しい表現によるパフォーマンスを創作・披露する文化サーカス・「東京キャラバン」は、2015年から2021年にかけて東京、ブラジル、東北、京都、熊本、豊田、高知、秋田、いわき、埼玉、富山、岡山、北海道で行われた。そして、「the 2nd」が2022年、11月に静岡・駿府城公園紅葉山庭園前広場、12月に東京・池袋西口公園野外劇場グローバルリンク シアターにて行われた。
参加アーティストは、前田敦子(女優)、浅草ジンタ(ミュージシャン)、REG☆STYLE(ダブルダッチチーム)、 沢則行(人形劇師)、宇治野宗輝(アーティスト)、花柳貴伊那(日本舞踊家)、 “東京キャラバン”アンサンブル(石川詩織、上村聡、川原田樹、末冨真由、手代木花野、 間瀬奈都美、松本誠、的場祐太、水口早香、吉田朋弘)、琉球舞踊(立方:玉城匠、 大浜暢明(静岡のみ)、上原崇弘(東京のみ) 地謡:玉城和樹、仲嶺良盛)、公益社団法人 北海道アイヌ協会(アイヌ古式舞踊)、静岡県立横須賀高等学校郷土芸能部(三社祭礼囃子)と幅広い。
順番に個々のパフォーマンスを披露するスタイルのイベントとは違い、東京キャラバンは個々のパフォーマンスを尊重しながら、混ぜ合わせていくところがポイントである。
例えば日本の北と南、遠く離れたアイヌの芸能と琉球の芸能のコラボレーションは相違と相似が発見できる。今回、初参加の高校生たちによる静岡郷土芸能は古典芸能と十代の若者との取り合わせがフレッシュ。パリで行われたダブルダッチの世界大会にて優勝したREG☆STYLEの縄跳びのうねりがいろいろなものを想起させて広がりを作り出すのはさすがの野田演出。
前田敦子がピータパンに不思議の国のアリスに扮し、浅草ジンタがノスタルジックな昭和の楽曲を奏で、沢則行のグローバルな人形劇を、宇治野宗輝の車やジューサーを使った現代アート的なパフォーマンス、花柳貴伊那の幽玄な踊りと地域性のみならず時代も混ざりあったような1時間は師走の寒さをひととき忘れさせた。
パフォーマンスを終えた野田秀樹さんにコメントをもらった。
公共の文化事業のパフォーマンスとしてはぎりぎりのやばい線までいけた気がして
「東京キャラバンは場所に特殊性があるから、場所によって受ける感じが全然違います。野外だと昼と夜でも違うので、各回違った印象になります。静岡のときは天気がよくて青空に凧の演出が映えました。花柳貴伊那さんが車の上に乗ったとき、光や風を強く感じることもできました。同じことをやっても池袋とはまた違った感覚ですよね。
「東京キャラバン the 2nd」は静岡からはじまり、そこで静岡県立横須賀高等学校郷土芸能部の高校生たちと出会ったことが面白かった。学生さんが般若のお面をとったときそこに新鮮な瑞々しい若い顔が出てきたことに感動して、そこを見せたいと思いました。本来はお面を外さずに退場するものなのだろうけれど、そこはあえて外してもらいました。
REG☆STYLEさんは静岡から東京公演の間に、ダブルダッチの大会で世界一になって帰ってきたんですよね。ふだんは5人でやっていて、今回ははじめて慣れない3人体制でやってくれました。もともとストリートパフォーマンスだから、こういう場所での空気の上げかたがうまい。カーテンコールのストリートらしい盛り上げ方も良かったです。飛ぶことよりも回すことの技術だとわかったので、ほかの参加アーティストの方々にも飛んでもらいましたが、貴伊那さんが圧倒的に体幹がしっかりしていて、いきなりうまく飛んでいました。浅草ジンタのチューバとトランペッターが飛ぶのもうまくいきました。浅草ジンタもライブ性の強い方々で、私の演出的な趣味であるジャズの即興のようなことができました。とりわけ、宇治野さんとのセッションが、公共の文化事業のパフォーマンスとしてはぎりぎりのやばい線までいけた気がして僕はとてもうれしかったですね。
1stから続けてきたなかで、今回もいいバランスで混ざりあえたと思います。東京キャラバンは、1st、2ndと便宜上分けていますが、タームの違いよりも、都度、参加するアーティストと行う空間の特性で違うものだと思っています。1st の京都や秋田などもまったく違う世界になりました。今後ももちろん続けていきたい。観て面白いと感じたお客様がもしこういう試みを今後も続けていくといいなと思ったら、ぜひ声をあげてください」
東京キャラバン the 2nd
2022年11月27日 静岡:駿府城公園紅葉山庭園前広場
2022年12月15~17日 東京:池袋西口公園野外劇場グローバルリンク シアター
- 演 出: 野田秀樹(劇作家・演出家・役者) ●参加アーティスト: 前田敦子(女優)、浅草ジンタ(ミュージシャン)、REG☆STYLE(ダブルダッチチーム)、 沢則行(人形劇師)、宇治野宗輝(アーティスト)、花柳貴伊那(日本舞踊家)、 “東京キャラバン”アンサンブル(石川詩織、上村聡、川原田樹、末冨真由、手代木花野、 間瀬奈都美、松本誠、的場祐太、水口早香、吉田朋弘)、琉球舞踊(立方:玉城匠、大浜暢明(静岡のみ)、上原崇弘(東京のみ) 地謡:玉城和樹、仲嶺良盛)、公益社団法人北海道アイヌ協会(アイヌ古式舞踊)、静岡県立横須賀高等学校郷土芸能部(三社祭礼囃子) ●参加クリエイター : 鈴木康広(美術)、原摩利彦(音楽)、ひびのこづえ(衣装)、赤松絵利(ヘアメイク)、 青木兼治(映像撮影) ●メインビジュアル:はらわたちゅん子(アーティスト/デザイナー) ●主 催: 東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、 一般社団法人緊急事態舞台芸術ネットワーク(東京のみ) ●後 援: 静岡県、静岡市(静岡のみ)、豊島区(東京のみ) ●連 携: 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場(東京のみ) ●協 賛: キャンメイク、CEZANNE、ROSYROSA
取材・文 木俣 冬